2005.05.11
「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」(時短促進法)は、年間総実労働時間1,800時間の達成・定着を目標として平成4年(1992年)に施行されました。
5年という期間限定の法律でありましたが、平成13年(2001年)3月31日までに2回ほど延長され、このたび平成18年(2005年)3月31日をもって新たな廃止期限を迎えることになっています。
1991年に成立した宮沢喜一内閣は「生活大国」の実現を内閣の目標として掲げました。
背景としては、日本人の「働きすぎ」に対するガイアツがあったためですが、その目標の大きな柱となっていたのが「労働時間の短縮」であり、日本人が「ゆとりと豊かさ」を実感できる社会を目指していたようです。
それを受けて成立した時短促進法は、労働時間を円滑に短縮し、労働者のゆとりのある生活を実現することが目的となっています。
制定当時の年間総労働時間は1,958時間、2003年度には1,853時間まで105時間も減少しており、1980年代に2,000時間から2,100時間台で足踏みしていたことと比較すると相当な進展です。
労働時間が短縮できたことのおもな要因は「雇用の多様化」に伴いパート労働者が増加したことが考えられます。
昨今の経済の低迷により、時間外労働(いわゆる残業)が減少したためにこのような現象がみられるだけで、正社員の労働時間はそれほどに減ってはおらず、週の労働時間が60時間以上の労働者は増加しているようです。
ここ10数年で最も進捗があったのは、完全週休2日制の普及です。完全な週休2日制の普及率は63%、何らかのかたちで週休2日制を実施しているのは97%にものぼっています。
ここまで週休2日制が普及しているのであれば、1日8時間・1週40時間という所定労働時間の短縮を議論する余地はないでしょう。
所定外労働時間の短縮は、昨今の経済活動の低迷によるものであって、従来から懸念されている時間外労働の割増賃金の割増率をあげるなどの政策的手段によるものではないので、景気が回復すると、残業時間も増える可能性は十分にあるでしょう。
年次有給休暇の取得率の向上については、1992年の56%をピークに年々減少の傾向にあり、2003年は48%しかありませんでした。まだまだ、改善の余地は十分にあると思われます。
所定外労働時間の短縮や、年次有給休暇の取得促進を促すために、「フレックスタイム制等の弾力的な労働時間制度の導入」や「年休と週休日等により2週間程度連続する【長期休暇(L休暇)】の早期導入や年休の計画的付与の導入」に取り組む事業主に対して、支援措置(労働時間短縮実施計画推進援助団体助成金)を講じていて、目標を達成するための施策を練っていたようです。
時短促進法が平成18年3月31日まで延長されたときに、
が新たに設置されています。
厚生労働省では時短促進法の期限延長を取りやめました。さらに「労働時間等設定改善法」(仮称)と名称を改め、「年間総実労働時間1,800時間」という目標に向けて計画的に時短を進めるための法律から、「労働者の健康や生活に配慮した労働時間等の設定の改善を進めるための法律」へと改正を行うための審議がなされていました。
延長を取りやめる理由として、短時間働くパート労働者と長時間働く正社員との「長短二極化」が進んでおり、「一律の目標を掲げることは時宜に合わなくなっている」ということからだそうです。
そこで、平成17年3月4日に労働安全衛生法等の一部を改正する法律案が、国会に提出され、平成18年4月1日からの施行が予定されています。
今までは、国が労働時間を短縮するための計画を立てていましたが、これからは、厚生労働大臣が労働時間等の設定の改善に関する指針を定めるということです。
フレックスタイム制度など弾力的労働時間制度の活用、短時間勤務制度の導入、有給教育訓練休暇の付与などの指針を受けて、労使が実情に応じて自主的な労働環境の改善に取り組み、労働時間や休日は、事業所ごとに労使が話し合いで決めることになるようです。
現代では働き方も多様化し、時間で計れない知的労働が増えています。その反面、仕事による強いストレスを抱える労働者が増えていて、「過労死」や「精神疾患」に関する労災認定の件数も高い水準にあります。更に、時間外労働に対して賃金が支払われない「サービス残業」もあちこちで横行しています。
こうした労働環境が悪化している社会情勢の中で、今回の法改正について、厚生労働省の幹部は、「労使で時間設定を話し合う場を作る法律と理解してほしい。そうした場を世の中に普及させたい。」とコメントしています。
これからは、裁量労働、モバイルワーク、在宅ワークなどの勤務スタイルの多様化がますます広がる可能性があります。
従来の「1日8時間・1週40時間」という画一的な労働時間の中では考えられなった「労働時間の柔軟化」を図ることは、業務を効率的に進めながら労働時間を短縮させようとするだけでなく、働く人々にとってのライフスタイルの変化をもたらすことにも繋がると思います。
今後も、時短促進に向けた努力は、労使ともに後退させてはならない問題ではないでしょうか。